トランプの行動は、マックスプロフィット(最大利得戦略) の見本だった。

トランプ氏が10日土曜日にホワイトハウスのテラスでスピーチし、元気なところをアピールした。金曜の入院から3日でホワイトハウスに戻り、木曜には選挙遊説に出るぞと吠えて、土曜日には演説したのだから、かなり速い回復だと言える。

そうだとすれば、病院で行なったどの治療がこれほどまで早い回復をもたらしたのか?わずか3日間入院しただけでホワイトハウスに帰り、翌日には大統領執務室に入って仕事に復帰することができたのか?

トランプ氏がつかったのは、抗体カクテル、レムデシビル、デキサメタゾンの3つ。レムデシビルは肺の炎症の重症化を抑える薬で、デキサメタゾンは炎症全般を抑える強ステロイド剤。どちらも既存の薬で、効能の範囲や限度がわかっており、コロナウイルスを退治して症状を急激に改善するようなものではない。

とすれば、抗体カクテルと説明されたものが効いたのか?

抗体カクテルという、いかにも怪しげな名の薬の正体は、「ポリクローナル抗体カクテル」。8g投与されたと発表されたが、コロナ治療薬として認可されたものではない。
いったい、何なのか?
今回の医師たちは、治療の前に守秘義務契約を結ばされたため、治療内容についていっさいしゃべることができない。そこで、いろいろな推論がなされることになった。その中で、もっとも事実に近いと言われるのが、「ポリクローナル抗体カクテル」だ。

トランプ氏に投与された薬品は、アメリカのバイオテクノロジー企業・リジェネロン社が作製したモノクローナル抗体2種類を混合したもの。この薬についてリジェネロン社は初期の臨床試験の結果、投与された患者のウイルス量が減少し、症状が軽くなるまでの期間も短縮される効果がみられたとして、7日に、正式な承認前でも緊急に使えるようにする許可をFDA=食品医薬品局に申請した。

時系列としては、大統領に(おそらく治験として)投薬したあとで、FDAに許可申請したということだ。

こういう未承認状態の薬を国のトップに使うようなことは、日本でできるか?

できまい。日本では、医師も医薬品当局(厚労省)も反対する。米国でできるのはなぜか? 

トランプ自身が指揮をとって決断したからだ。アメリカでも、メインストリーム(主流派)の医者は、そういう危なっかしい決断に与しない。
トランプ氏が今回とった決断のスタイルは、最大の効果を狙い期待する「利益最大作戦」。大きな利得を期待できそうなら、副作用などの損失が未だ判明していないなら、利得を得るためにリスクテイクするのである。トランプ氏はゴルフ好きだから「Never up never in、ネバーアップネバーイン:カップに届くようシッカリうたなきゃ、カップにははいらない」という格言が身に染み込んでいるだろう。
反対に、日本の医師や医務技監なら、そんなことをしてあとで後悔することがおきたらたいへんだから、やらないし、やらせない。日本の官僚の決断スタイルは、「後悔最小作戦」。なますでも羹と思ってフーフー吹く、行動スタイルである。

利益最大作戦と後悔最小作戦の違いは、決定的だ。
後悔最小を望むものは、利益最大派を、無謀・危険多い・欲ボケしている・焦ってる・データにさからってる、などと攻撃する。今回のトランプの選択も、後悔最小派に攻撃されている。
後悔最小の考え方からは、「なにもしない」ことしかでてこない。新たなデータを観察するための試験にも厳重な枷がかけられる。その結末は、「なにもしない」「このまま様子をみる」に陥る。

日本がベンチャー発想で遅れをとってきたのは、官僚の「後悔最小」思考のせいである。かれらは、後悔最小を仕事上の義務にし、人生上の鎧にしている。御身大切で、新しいことをクワバラクワバラとする処世訓は「萎縮」した社会をつくるだろう。「安心・安全」だけでは、ベンチャーが弾け産む大成果をもたらせず、世界に劣後する社会しか生まない。

トランプ氏が自分のためだけに行なった抗体カクテルという判断は、1ヶ月後の抗体が消える可能性もあるまがいものである可能性もあるが、とにもかくにも、最大利得作戦の実例をわかりやすく見せてくれた。バイデン氏ならやるはずのない、ある意味「名人芸」でもあった。成功するかどうかは、知らん。

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