クラスター鬼ごっこか、市中感染率把握か、神学論争はなぜ起きたか

2月、テレビ朝日で玉川氏と岡田教授が「検査をとっととやれ」とけしかけて社会をパニックさせているのか、感染研の押谷氏が「クラスター鬼ごっこ」に執着して硬直してしまっているのか?


テレビっ子のわたしの意見を整理しておこう。
2月、外国からは「日本はわざと検査せず、感染者を少なく見せている」と疑われる始末。

2月の初めから下旬にかけて、PCR検査をちゃんとできる【受付、採取、運搬、機械セット、遺伝子増殖、結果判定】の体制が整っておらず、八の字眉毛の大臣は、「全国で最大日量1800」と発表して、その少なさで、国民をがっかりさせた。

PCRの機械がない、検査液がない、民間検査機関には未知の危険なウイルスを扱わせることができない、とか、いろんな話がでてきて、そのうえ、【受付】の条件に「武漢帰り・濃厚接触者」という条件をつけていた。マスコミは、これを「武漢しばり」と呼んだ。

生活者の立場にたつテレビ局の最も強い関心は、日本のまちなかの現状がどうなっているかにあった。
「市中感染率を確かめる必要があるから、一定エリアで無作為で検査する必要がある」という立場に立ち、「検査をとっととやれ」と強い口調で主張した。政府の専門家会議は、「市中感染率をしらべる」のではなく、「クラスターを追いかけて、ひとうひとつ潰す」方針を取った。


市中感染率を優先する方針は、地引網でゴソっと全部をとらえて社会全体の状況を把握することで正しく感染拡大を抑え込もうとする作戦であるに対し、クラスターを追いかけるやりかたは、水面上に跳ね上がった獲物を一本釣りしていく作戦である。前者は「統計技」をつかった作戦である、後者は接触経路をたどる「職人技」を使う作戦である。


2月の中旬という時点でどちらが正しかったのか?


専門家会議は、全員が感染症の専門家だった。公衆衛生の専門家がいなかった。感染症の専門家にとって、市中感染率を調べて全体を把握するのは自分たちの仕事ではなかった。そのため、自然の流れとして、自分たちが習熟してきた職人技を使う「クラスター鬼ごっこ」を採用したのだ。

このなりゆきの結果、市中の全体を統計的にとらえる仕事は、あとまわしにされ、優先順位が低く置かれ、結果として事実上、誰からも忘れ去られた。
これは、故意に排除されたのと同じである。なぜなら、市中感染率の把握とクラスター鬼ごっこは車の両輪として、並行して進めねばならないテーマだからだ。

市中感染率の把握を重視するテレビ朝日の玉川氏の主張は、いきおい、クラスターだけやってる専門家会議と厚生労働省を問い詰める口調となり、彼らを苛立たせた。

反撃が一斉にはじまった。副座長の尾身自治医科大学名誉教授は、「クラスター班はほんとうによくやってくれています」とテレビで述べ、 感染研の脇田所長は「誰もかれも検査することで、医療崩壊を起こす」と激怒した。「WHOも米CDCも日本の独自の方針を支持している」というネットニュースも配信された。

厚生労働省や自民党のツイッターがテレビ朝日の番組を名指して避難した。

玉川氏もまけてはいない。番組内で反論して、厚生労働省のミスリードにみちた発表文をやりこめた。
ますます恥をかいた厚生労働省と自民党に、玉川氏は恨まれた。危険を察知した、番組のあるじ羽鳥氏が、玉川氏の尖り気味の主張を和らげる台詞回しで、番組をたくみに運営し、政府側とケンカする険悪な空気をおさめるた。


この3月初旬は、「欧米で感染爆発しているのに日本が少ない感染者ですんでいるのは専門家会議の方針が的確だからだ」というロジックで、フジサンケイ保守も参戦しようとした。「そら見ろ、玉川」と、玉川氏に「危機を過度にあおる罪」を被せようとした。


安倍氏が要請した2週間の自粛が終わった3月中旬から、国民の気持ちが緩んだ。感染者が増加し始めたのだ。
経路を追えない感染者の存在が目立つようになってきた。クラスターを追いかけて経路を掴んですべてを潰していくという作戦が、不可能になり始めた。クラスターを追いかけるだけではどうしても掴みきれない感染者が存在するのだ。


3月下旬、経路を追えない感染者が3割をこえた。
このころテレビで、クラスター班の懸命の追跡活動と結果分析の検討を取材した番組をみたが、クラスター班の要員が連日の忙しさで、いっぱいいっぱいになってきていることが伝わってきた。
WHOでも仕事をしてきた実績をもつクラスター班のリーダーである押谷医師でさえ、要員に指示を出すのに、大声をあげていた。みなのイライラと緊張が画面からも感じた。クラスター鬼ごっこだけでは、感染拡大を防ぐことができそうにないことが、あらわになってきたのである。


感染症研究所の所長脇田氏は、専門がC型肝炎の感染。インフルエンザやコロナは持ち場とは言えない。そのため、副座長の尾美氏がメディアに出て対応することになっている。
2月に専門家会議が取った方針「クラスター鬼ごっこ」は、急速に全体作戦としての意味がなくなった。鬼だらけの森にはいって鬼の後ろ姿を追っても、鬼はどんどん繁殖するばかりだ。クラスターを追う作業は、見つけた陽性者を隔離するためのルーティーン、あえていえば、弥縫策にすぎなくなった。これをいくらやっても、医療体制の崩壊は防げない。

一方、市中感染率を調べる話も、パンデミックという現実に飲み込まれて、ほとんど意味がなくなってきた。


緊急事態宣言がまだでない。

さっさと、人と人の接触機会を止めるべきだ。人と人の顔合わせを止めてしまえば、ウイルスは、広がれない。

経済のすべてを1ヶ月止めて生じる損害は40兆円だ。
こんなときこそ、赤字国債で、社会と国民を救済すべきだ。1100兆円の残高が1140兆円にふえても、日本がさっさとやりなおせるのなら、やすいものだ。

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